「おのれよりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために堂々たる詩家となったものが幾らもいるのだ。」
中島敦の山月記、虎の述懐に20代の私はしがみついた。
褒められることなどとっくにあきらめ、それでもわずかだが本物の充実感だけを頼りに、人生のかなりを使い果たした。
ずっと洗練を追って造ってきた自分の作品が、なぜか田んぼの風景みたいに見えてくる。
乏しい才能を一心に磨くことができれば、結果はどうでも、悔いはないのかもしれない。
約30点を展示予定。　　（林 美紀子）

＜略歴＞
1973年新発田高校卒
働きながら油絵、木版画、書を学ぶ。

1990年　プリントインターナショナル受賞（米）
1992年　千紫会万紅展(書）翠軒賞（最高賞）受賞
1995年　第1回川上澄夫美術館木版画大賞展準大賞
2006年　日本の版画〜江戸から現代〜出展
2006年 （米ポートランドアートミュージアム）
2010年　九州産業大学美術館にて個展（福岡）

「穀雨ーII」　40×56cm　木版画　2013年