2010.9.9 会場風景
冨所龍人
「去り行く夏」 130.3×162.0cm 油彩 2009年
 この絵(去り行く夏)の制作途中、母が他界しました。
 涙で筆先をコントロールすることが出来ませんでした。
 涙を拭いながら、悲しみを握りつぶすように同じセリフを繰り返し念じました。「この絵で出来ることは全てやろう。自分の技術を全て出し切ろう。」悲しみを怒りに似た心情に変換しながらの制作が続きました。

 いままでの人生で、様々な物事に全力を尽くしてきたかと自問すればどれもこれも疑えばきりがなく、
「それなりに」という妥協が隣り合わせだったような気もします。しかしあの当時の自分だけは、
「認めてあげてもいいのかな」と思うのです。絵が完成した当時、結果としての絵の出来、不出来の判断すら不要に思えました。

 油絵7〜8点、デッサン3点を展示予定です。(冨所龍人)
 <略歴>
 1964年新潟生まれ。
 1988年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、六美大学卒業生選抜絵画展(ブロードウェイギャラリー)。
 1993年二人展(アトリエ我廊)。2000年富田賞受賞会員推挙、明日の白日会展(松屋銀座)。
 2001年三人展(新潟絵屋)。2006年第2回新潟の作家100人(新潟県立万代島美術館)。
 2003、05、07年個展(羊画廊)。

(左)「窓辺」80.3×53.0cm
(右)「夏のblue 」90.9×60.6cm

共に油彩、2010年制作