2010.9.2 会場風景
渡辺郁夫
 個展初日の9月2日は父の命日で、今年が3回忌。最終日7日は母の誕生日です。
 毎回初日に私の作品を眺めていた父の姿が会場にないのは寂しいですが、母の笑顔は私に力を与えてくれます。

 父は亡くなる2日前の朝、大きく澄んだ瞳と弱った身体で『タノムズ・・・タノムゾ』と、必死で私に何かを伝えました。
しかし、その時、私には父が何を伝えたかったのか分かりませんでした。
 その日の夕方、美しい花で見舞ってくれた姪に『アリガト』と云い、父は意識不明になり、9月2日の朝、
母に見守られてひっそりと息を引き取りました。まるで、線香花火の微光が消え落ちてしまったかのように・・・。

 「父は自分自身の死を、あの日あの時、素直に受け入れたんだろう。父が最期に言い残したことを理解できなかった自分が、
今も情けなく申し訳がない」
 「描き続けることで、私も父のように静かな終焉を迎えることができるだろうか・・・」
 意識不明になる直前に父が渡してくれた幼児の落書きのような紙片が、今日も、私に何かを語りかけています・・・。

 姿は見得ませんが、最近は父の存在をより強く感じています。

 油画「灰になる顔」15点、ガラス絵「白い女」15点を展示します。(渡辺郁夫)


 <略歴>
 新潟市生まれ。故熊谷喜代治氏に師事、武蔵野美術短期大学美術科油絵専攻卒業。
 1976年から個展で作品を発表し、近年は油画のほか鉛筆やガラス絵制作も手掛けている。
 
(左)「白い女1」
18.0×12.8cm
ガラス絵 2009年

(右) 「白い女2」
18.0×12.8cm
ガラス絵 2009年