佐藤公平
写実に生きた画家、高島野十郎 (1890年〜1975年)の画集がある。
月を描いた絵や静物画も好きだが特に好きな絵が蝋燭の絵だ。
野十郎はなぜ蝋燭の絵を描き続けたのだろうか、やさしい魅力と静けさを感じる蝋燭の絵を見ているうちに
私もまた「火」が作りたくなった。高島野十郎へのオマージュである。

今では日常で火を見る機会はあまりないが昔は家に囲炉裏があったり焚き火をしたりと火が身近にあった。
火を見ているとなぜか気持ちが落ち着き、ものを考えたりまた無我になれたりと火には不思議な力を感じる。
今の我々には想像すらできないかもしれないが電灯のなかった頃の漆黒の暗闇の中で
あの小さな灯の光によってどれだけ心が救われたことだろうか。

 「暗闇の 彼方に光る 一点を 今 駅舎(えき)の灯と 信じつつ往く」(映画「駅 STATION」より)

夜、遠い灯火を見るたびになぜかこの歌を思い出す。
そして今、自分にめざすべき灯は見えているのだろうかと・・・・・・・。黒陶の作品・約20点を展示予定。 (佐藤公平)
<略歴>
1968年神谷紀雄氏に師事。1972年千葉市に築窯し独立。
1976年新潟県新発田市に移窯。「五鬼原窯(ごきげんよう)」築窯。
1987年日本陶芸展最優秀作品賞「秩父宮賜杯」受賞。1988年ソウル・五輪芸術祭「東西現代陶磁展」招待出品。
新潟、東京、ウラジオストクなどで個展・グループを多数開催。新発田市在住。
「黒灯-1686」 30×30×h20cm 黒陶 2010年
「黒灯-1683」 14×14×h20cm 黒陶 2010年
2010.4.2 会場風景