長谷部 昇
創作メモから
 今回展示する作品の中に地震に想を得たものがある。
トンネルが突然崩壊し、走行中の車が押しつぶされ3才の子どもだけ救出、一緒にいた母と姉は亡くなっていた出来事、
地震前までは一家団欒の場だっただろう部屋を水抜きのために設置された太いホースが数本貫通する光景、
また牛舎の屋根だけが見える泥沼と化した広場に立ちつくす弱々しい牛たちの姿・・・。
そんな報道に接しながら、すべてを失くした人々の無念さに思いを馳せてみた。
そして、それらをベースにしながら30号キャンバス10点をひたすら削り込んだ。
それぞれが1点だけでも、10点を横一列に繋いでも作品として成立させたい。
そんなことを考えたが主題の重みと表現のもどかしさにのたうちまわるだけだった。
(長谷部 昇)
「疾走する闇」(部分) 30号
略歴
1939年山形県酒田市生まれ。1960年自由美術展に初出品、佳作賞受賞。1962年新潟大学芸能科卒業。
1964年自由美術展佳作賞受賞、会員に推挙。個展(ときわ画廊、東京)。以後、東京、新潟、長岡で個展、グループ展を開催。
1997年文化庁「現代美術選抜展」。2004,2006年新潟の作家100人展(新潟県立万代島美術館)。